
茶道のお稽古で使う抹茶碗は、日常使いの器とは少し役割が異なります。
流派や先生の方針によって好まれる形や考え方が変わるため、まずは日頃お世話になっている先生に相談するのが一番確実です。
そのうえで、自分で選ぶときの目安として大切にしたいのが、扱いやすさ、予算、そして季節感。
無理なく、長く、気持ちよく使える一碗を見つけることが、お稽古を続けるうえでの大きな助けになります。
■ 扱いやすさを基準にする

お稽古では、湯を通し、茶筅を入れ、何度も点てる場面があります。
繰り返しの動作がしやすいかどうかは、茶碗選びの大切なポイントです。

椀形(わんなり)は茶筅が動かしやすく、稽古用としてとても使いやすい形です。
平茶碗は夏向き、筒茶碗は冬向きなど、季節によって形を使い分ける楽しみもあります。
口径と高さのバランス、重さ、内側の広がり、手に持ったときの安定感など、
点てる動作を思い浮かべながら選ぶと、自分に合う一碗が見つかりやすくなります。
■ 気負いすぎない予算で

【抹茶碗 七宝 宝泉】¥5,900
稽古用の抹茶碗は、とにかく出番の多い道具です。
最初から高価なものを選ぶ必要はありません。
まずは気軽に使い始められる一碗を手にして、慣れてくると自分の好みや向きが自然と見えてきます。
■ 季節の気配を取り入れる
茶道では、道具を通して季節を感じることを大切にします。
ただし、必ずしも「今の季節の柄を使う」というわけではなく、これから訪れる季節を少し先取りするという考え方もよく用いられます。

【抹茶碗 桜 俊山窯】
残暑の頃にすすきや月の文様を選べば、秋の気配が静かに立ち上がります。
早春に淡い若草色を取り入れれば、これから来る季節のやわらかな空気が漂います。

【抹茶碗 織部 紅葉に鹿 宝泉】
季節そのものではなく、季節の予感を器にのせる。
そんな取り入れ方ができると、稽古の時間がいっそう豊かになります。
■ 絵柄の選び方
稽古用の茶碗は、技を磨くための道具でもあるため、華やかすぎない控えめな文様が扱いやすいことが多いです。
正面が分かりやすい一方向の絵柄や、やわらかい筆致の草花などは、点前の動作にも馴染みます。

【抹茶碗 色絵菊 亨】
全面に模様が入ったものや、金彩が強いものは華やかですが、稽古では少し扱いづらい場合があります。
季節をほのかに感じる、軽やかな絵柄から始めると、落ち着いて使いやすいでしょう。
■ まずは“続けられる一碗”から

稽古用の抹茶碗は、上達を支えてくれる大切な相棒です。
流派や先生の方針に沿いながら、扱いやすさ、予算、季節感の三つを手がかりに、自分のお稽古に寄り添う一碗を選んでみてください。
まずは通年で使いやすい椀形を一つ。

【平抹茶碗 スイカ 宝泉】
そこから、季節や気分に合わせて平茶碗や筒茶碗、季節の気配をのせた茶碗を少しずつ揃えていく楽しみもあります。
道具を選ぶ時間もまた、茶道の学びの一部です。
無理なく、長く、お稽古を続けられる一碗に出会えますように。