京焼の名窯、止まらない進化　今橋貴古

伝統と革新が織りなす
美しき陶の世界

京都・宇治市炭山の静かな山あいに佇む貴古窯（きこがま）。
この工房で、四代目・今橋貴古（いまはし たかよし）さんは、日々うつわづくりに取り組んでいます。

1964年生まれの今橋さんは、京焼・清水焼の名窯・貴古窯に生まれ、京都市立芸術大学の陶磁器科で学んだ後、40年以上にわたり技術を磨いてきました。

静かな工房から生まれる丁寧な手仕事

工房では、ろくろが静かに回り、粘土の感触が心地よいリズムを刻みます。
彼の作品は、伝統的な技法と現代的な感性が融合したスタイルが特徴です。

繊細で上品な割烹食器や、華やかな絵付けの器など、一点一点が丹念に作り込まれています。
軽やかなかたちと、釉薬を使った多彩な色づかいが、使う人の心を引きつけます。

 

すべての工程に心を込めて

今橋さんは、粘土選びから形づくり、絵付け、焼き上げまでのすべての工程を自ら手がけています。
工房に満ちるろくろの音や釉薬の香り、焼成の熱さまでが一体となり、うつわに生命が吹き込まれていきます。

芸術性と実用性の両立を目指しながら、京都の伝統を大切にしつつ、現代のライフスタイルに合ったデザインを取り入れることで、常に進化を続けています。

今橋さんの器を手に取ると、作陶の風景が思い浮かび、作り手の思いが静かに伝わってきます。

作家プロフィール｜今橋 貴古（四代目）

• 1964年（昭和39年） 京都生まれ
• 1987年（昭和62年） 京都市立芸術大学 陶磁器科 卒業
• 宇治市炭山にて独立開業
• 1988年（昭和63年） 六世小川流煎茶道家元・小川後楽先生より指導を受け、小川流のお道具制作を開始
• 2002年（平成14年） 京都高島屋 美術工芸サロンにて個展
• 2007年（平成19年） 京都 東急ホテルにて個展
• 2009年（平成21年） 日本橋高島屋「迎春のうつわ展」出品
• 2013年（平成25年）より 名古屋・京都で「マエストロ貴古作陶展」開催
• 2019年（令和元年） 白砂村荘 橋本関雪記念館にて個展
• 2023年（令和5年） 全国伝統的工芸品公募展 バイヤー賞 受賞

貴古窯の歩み

初代 貴古｜今橋 兵治

• 1911年（明治44年） 京都・粟田口の雲林院宝山先生に師事
• 1921年（大正10年） 清水坂にて独立し陶業を始め、「貴古」を名乗る
• 1932年（昭和7年） 洛東泉涌寺に窯を移す
• 1943年（昭和18年） 技術保存作家として認定

二代 貴古｜今橋 伸夫

• 戦後、父のもとで陶芸を学ぶ
• 画を矢田百渓先生に師事
• 1953年（昭和28年） 父の跡を継ぎ、主に茶道具の制作に従事

三代 貴古｜今橋 善和

• 1946年（昭和21年） 陶芸を始める
• 1958年（昭和33年） 二代目の跡を継ぎ、現代的な作品づくりにも挑戦
• 1976年（昭和51年） 宇治市炭山に窯を移し、地域とともに陶芸の里づくりに尽力
• 1977年（昭和52年） 通産大臣より伝統工芸士に認定
• 1980年（昭和55年） 内閣総理大臣賞受賞（全国伝統的工芸品展）
• 1982年（昭和57年） 京都府知事賞受賞
• 1994年（平成6年）「京の名工」に選出
• 1996年（平成8年） 京都府産業功労者表彰
• 1998年（平成10年）「現代の名工」として労働大臣表彰
• 2000年（平成12年） 勲六等瑞宝章 受章